山上 直輝:アメリカの独立リーグで活躍したサウスポー
始めに
今回はアメリカの独立リーグで活躍され、その後フランスで選手兼コーチとして活躍した山上さんにお話を伺いました。
今では野球留学がかなり盛んになって来ていますが、当時は殆ど知られておらずかなり珍しかったそうです。
また、アメリカだけではなくフランスで選手兼コーチとして活躍され、トータル4年間海外で野球をされた経験を様々な角度から質問しました!
海外の野球はヨーロッパにも可能性がある!かなり貴重な情報を沢山教えて頂いたので、じっくりと読んでみてください!
生年月日:1983年7月29日
競技:野球
国:アメリカ 2年 フランス2年
主な経歴:三リーグセミプロ入団 2年目アメリカのマウイ島の独立チームに
フランスのチームでコーチ×選手 2年
質問欄
今回取材に応じて下さった理由は何ですか?
今回取材をして頂いた事によって、僕の海外経験を色んな人が見てくださるきっかけになると思ったからです。
昔は特に高校、大学、社会人、プロがあるというイメージが強く、海外に目を向けることすら正直ありませんでした。
でも実際はそうではなく、アメリカを始めとした色んな国でスカウトをしてもらえる可能性があります。
僕の経験を伝えることで「海外にも野球ができる環境があるんだよ。」ということを伝えたいと思いました。
また主な経歴にも書いてあるように、フランスでの野球経験があります。
野球のイメージはアメリカがまだまだ強く、ヨーロッパに野球があることすらあまり知られていません。
この取材を通じてヨーロッパでも野球あるんだということも発信していけたらと思います。
大きな理由としては、東京オリンピックの後のフランスのパリでオリンピックが確定していることです。
今回東京で野球とソフトボールがオリンピック種目に入ったものの、次のオリンピック種目から除外される可能性がある種目の一つでもあります。
せっかく東京オリンピックで盛り上がれたとしても、そこで終わってしまうのは寂しすぎます。
野球を盛り上げる意味でもその一つの助けにでもなればなとも思いました。
また、通常行われる取材というのは基本的にメディアからですが、今回取材を依頼してくれた本庄さん自身がスポーツをしていることから、「共感してもらいやすいのでは?」と興味を持ったことも理由の一つです。
野球を始めたきっかけ
小学校4年生から初めました。
友達に誘われて、その体験に行った事がきっかけです。
留学計画について詳しく教えて下さい。
一年目は観光ビザで行ってアメリカのビザのルールに則って野球をしました。
しかしアメリカはビザが難しく、観光ビザを使い試合の日程を逆算して90日ギリギリで帰って来てまた飛んでの繰り返しでした。
実際にまーくんや大谷翔平選手のようなメジャーの選手ですら時間がかかっていることが現状です。
アメリカでビザを取ることはかなり厳しい現状があります。
*別の子の記事の時に聞いた話によると、トランプ大統領になってから更に厳しくなっているようです。
留学前の海外へのイメージはどうでしたか?
アメリカに行くと決まった時は、アメリカが野球が強いことを知っていたので楽しみがかなり大きかったです。
野球しに行くことが1番の目的だったので、英語等の準備はほとんどしていませんでした。
そのせいで実はアメリカに行く時に飛行機を乗り過ごしてしまったことがあります。笑
便の前で待っていたのに中々呼ばれないなと思っていて、インフォメーションに行って聞いたところ、「もうその便は出発しましたよ」と言われました。
当時本当に英語を話せなかったので、英語話せないからなんとかしてくれと頼み込んでタダで別の便に替えてもらえました。
この時ばかりは、少し勉強しておけばよかったなと思いましたね。笑
フランスで2年間選手兼コーチをされたとおっしゃっていましたが、どうしてフランスでする事になったか経緯を教えてください。
実はフランスに行く前はアメリカでまだやりたいという気持ちがあったのですが、僕が所属していたチームが廃部になってしまい、そこから一旦日本に帰国してきました。
その後、フランスより先にドイツのチームに声をかけられたのですが、「縁があれば」と言う事でその話が流れ、その後にフランスのチームからかなり具体的な内容でスカウトの話が来ました。
給料の話ももちろんのこと、宿舎の用意、フランス語の家庭教師までつくとのことでした。
僕はピッチャーなのですが、外野やバッターもできるかと聞かれて、結局外野用のグローブも一緒に持っていきました。
かなりオールマイティーなことをしましたし、日本ではなかなかできない経験だったと思います。
フランスのチームは日本と比べてどのような違いがありましたか?
正直日本のように盛り上がってはいませんでした。
野球自体は知っているけど、野球をどこでやっているのかを知らない人が多かったり、なかなか会場は身内以外の人が来ることがなかったと思います。
一度フランスのオールスターに選ばれた時に観客が1500人程見に来ていて、フランスの野球自体もまだまだ可能性はあるなと感じました。
フランスで今後の伸び代はかなりあるスポーツだと思います。
留学後に変わった自分の考え方や価値観があれば教えてください。
アメリカに行っていた時にみんなより早くグランドに行って準備してグランド整備をしたりしていました。
日本だと「お。頑張ってるなあいつ」と思ってもらえることも結構あると思うのですが、アメリカではそれはなんのアピールにもならなかった事にかなりびっくりしたことを覚えています。
そこでどれだけ他の選手より働いていたとしても結局結果が出ないなら一緒。
そういう世界でした。
その時に「アメリカではこれって必要ないんだ」と思いましたね。
後は、みんなで練習している時に毎日一生懸命練習を重ねている傍ら、他の選手たちはかなり手を抜いて練習をしているように見えました。
こんなもんで大丈夫なのか?と思いながら見ているとチームメイトから「そんなに一生懸命にやっていたらシーズン持たないぞ」と言われた。
また、日本だと選手とファンの距離が遠くサインをくださいと言ってもまた今度ねと言って書いてくれない選手も居たりしますが、アメリカでは更衣室にいつ帰れるんだろうと思うくらいまでサインを書き続けました。
とある選手がサインを断っているのを他のチームメイトが見つけると「今書いてやらないんでいつ書くんだよ。今書いてあげなよ。」と言われる程、ファンがいるから自分たちが野球をできているんだという気持ちが滲み出ていました。
時には試合中にベンチの外側からサインを求めて来た子供達にも書くこともありました。
文化の違いとスポーツに対する価値観がかなり変わった瞬間でした。
コーチをされた事もあるとおっしゃっていましたが、指導方法や選手対スタッフの在り方で違いがあれば教えてください。
僕がピッチャーで投げていた頃、牽制球の投げ方以外教えてもらったことがないです。
日本って投げるフォームや捕球の仕方を教える時に方法を1から10までいいますよね。
海外はそういうことは言わず、型にはまったような投げ方をする人はかなり少ないです。
最低限のポイントを押さえていれば投げられるし、むしろバランスを崩した体制になっても送球が乱れない。
形がどうとかよりもバランスを重視しています。
バランスさえ崩れなければちゃんと投げれることがわかっているので、よくそんな角度から投げられるなと思うような角度からも正確な送球ができる選手が沢山いました。
正直日本人は全ての面において型にハメすぎてしまうところがあり、少し体制が崩れた時に送球が乱れたり、ピッチャーが自分のフォームが崩れた時にかなり時間がかかってしまいます。
その面から考えるとバランスを整えることを優先して芯をしっかり作っておくことができれば、メジャーで活躍する選手がもっと増えると思いました。
フランスに行った時にコーチをして感じたことは、選手は選手の役割、コーチはコーチの役割があり立場がどうとかっていうことはありませんでした。
日本ならコーチのいう事に従うのが当たり前でしたが、フランスの選手たちはどんどん意見をぶつけて来ます。
なので、自分の言った事に対してなぜこう言ったのかを説明して説得してもらわなければいけないし、お互いフェアな状態で話し合うことが大前提でした。
頭を悩ます時期もありましたが、口でとやかくいうのではなく背中で見せることを意識して、付いて来てもらう体制をとりました。
そうすることで、選手たちも納得していましたしより良いチームづくりができたと思っています。
今後の目標を教えてください。
現在は会社員として働いていてい、現役選手としては区切りをつけました。
次は社会人野球を立ち上げる準備に携わっていて、今後はそのチームにコーチとして携わっていきたいと思っています。
またせっかく海外で野球をやったので、日本人の選手をフランスへを送り込んだり、フランス人の選手を招いて交流、トライアウトができる環境を整える事も考えています。
後はフランス人と日本人の子供たちを交流させることが良いなと考えています。
現在はまだまだ始めたばかりで形にはなっていませんが、今後少しずつ形になるようにしていきたいと思っています。
山上さんのセカンドキャリアを教えてください!
今、ソニー生命保険でライフプランナーという仕事をしています。
(人を幸せにするような仕事です!)
ソニー生命保険の
営業職は全員が転職採用で、プロ野球経験者など、元アスリートの人たちもセカンドキャリアとして全国に多く採用されています。
※野球の世界では、いわゆるセカンドキャリアの取り組みについては、他の競技と比べて取り組みが劣っていると感じます…。
「現役を終えて、一体何をすれば良いのだろうか??」
プロ野球選手や僕のように海外でスポーツを一生懸命やってきた人たちだからこその悩みでもあります。
そういった人達に自分が何らかの道標となればと感じています。
自分自身も以前は、野球に直接仕事として関わることだけを考えていましたが、そこが全てではなく、
「今後どのように野球に関わっていくのか」
を考えるようになりました。
現在は直接的ではなく少し外側から野球を見てみることにしています。
僕がソニー生命で働くことになったきっかけは、自分の海外のプロチームで野球経験等を伝える講演をしていたことソニー生命の営業所長との出会いのきっかけになり、現在の会社への入社に繋がりました。)
この出会いは野球を一生懸命努力し続けて得られた成果かも?と感じています。
ここから、更に新たな展開がある気さえしています。
野球は野球だけの出会いではなく、その他の方々と出会うことができるものでもあります。
自分の経験を伝えていくメリットは誰かの為になることも勿論そうですが、こうして誰かの為に行うことでたくさんの出会いを生むきっかけにもなっています。
今後の未来のスポーツ留学生に伝えたいこと。
まずは日本以外にも選択肢があるということをわかって欲しいです。
海外に出ることのメリットとしては、自分がどれくらい恵まれた国で住むことができているのかがわかりますし、逆に行った国の良さもわかります。
それは野球だけじゃなくどのスポーツにおいても当てはまりますし、自分がやって来た競技を生かして欲しいと思います。
また海外でスポーツをしたという経験で終わるのではなく、次の世代や今後の人生につなげて行って欲しいと思います。
ありがとうございました。
最後に
山上さんとの出会いは出会いが出会いを産んで叶ったものでした。
私がかなり印象的だったのは、「ヨーロッパで野球とかソフトボールやってるよ。」ということです。
正直ヨーロッパのイメージはサッカーが強い方が多いと思いますが、そんな事はなく実は色んな国で行われている競技ということがわかりかなり嬉しかったです。
自分自身の経験を誰かに伝えたいという思いから今回の取材を受けてくださった事もあり、かなり一つ一つの質問を丁寧に答えてくださいました。
野球を続けたい人の新しい選択肢として、ヨーロッパに進出できると可能性もかなり広がりますね!
山上さん今回はお忙しい中取材に応じてくださりありがとうございました!
これからの野球とソフトボールを一緒に盛り上げていきましょう!
はるか