スポーツ留学生のひとりごと。

初めまして!このブログではスポーツ留学を考えている人たちが少しでも留学のイメージが湧きやすいように。そして行ってみないと分からないような現地の情報を一人一人に質問し、まとめています。海外の留学に興味がある方は是非色んなスポーツ留学生の先輩を見てみてください!

齊藤浩太郎:理学療法士

 

紹介文

出身地:新潟県上越市(世界一の豪雪地域)生まれ

高校を卒業して脱新潟、愛知県名古屋市の大学へ

出身校

新潟県立高田高校、名古屋大学

生年月日:1994年3月26日

競技:バスケットボール、アメリカンフットボール

国:アメリカ・アリゾナ州インディアナ州

主な経歴

高校バスケ(選手): 新潟県総体ベスト16

大学アメフト(トレーナー、コーチ): 東海リーグ優勝 (2017年度, 2013年度)

名古屋大学アメリカンフットボール部スタッフリーダー

理学療法士 (2016.4)

JARTA認定スポーツトレーナー(2015.12)

モットー:Fake it till you make it

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〜質問欄〜

今回取材に応じてくれた理由

本庄さんにご依頼いただいた際、彼女が奮闘されている活動のビジョンに共感したから。

 

留学目的

アメリカへの憧れ、スポーツ/医療現場での疑問、奨学金の存在などいろいろな要素が良いタイミングで重なったことが今回のアメリカ留学のきっかけです。

高校までバスケを続けていたことや、大学でアメフト部の学生トレーナーをしていたこともあり、NBANFLなどアメリカのスポーツが好きで、漠然としたアメリカへの憧れは以前からありました。留学しようと具体的に考えたのは、修士1年生の時でトレーナー活動や、クリニックでの勤務を通じて、自分自身の介入には本当に根拠があるのか?と考えるようになりました。例えばあなたが腰痛で困っていてクリニックを受診したとします。医師や理学療法士に対して「あとどれくらいで痛みは改善しますか?」と聞いた際に、「やってみないと分からない」や根拠もないのに「ストレスが原因です」などと言われたらあまりよい気持ちはしないと思います。もちろんピンポイントで、○週間で治りますと断言することは難しいですが、出来る限り再現性があって根拠のある介入方法がベースになることが重要と考えています。専門用語ではEvidence Based Medicine: EBMと呼ばれています。

どこかでEBMを学べる環境はないかと考えたときに、アメリカの大学院を見つけました。大学院進学のためにはアメリカの大学で単位を満たす、医療施設で見学をおこなうことが条件と知ったので、まずは日本の大学院を休学して、アメリカのコミカレ(2年制の短大)で授業を受けることにしました。 また、この時期にちょうど大学でトビタテ留学JAPAN日本代表プログラムの奨学生を募集していて、主にボランティア活動やインターンシップなどの実践活動に対して奨学金が給付されるとのことだったので、せっかくアメリカに行くならコミカレで授業を受けるだけでなく、現地で病院実習や研究活動もしようと思い、留学計画に組み込んで応募しました。

留学計画の立て方

基本的にはエージェントを通さず、全て自分で計画しました。情報収集はトビタテの先輩を学校内で探して知り合いの知り合いを伝ってアポを取りました。。

留学目的自体はある程度固まっていたのですが、応募締切の2週間前にトビタテ留学ジャパンの存在を知ったこともあり、かなり焦りましたね。

「どこのコミカレに進学するか」「医療機関の見学先や研究活動先をどう確定させるか」については具体的なプランかつコネクションもなかったのでかなりバタバタしました。コミカレに関しては、無料で開催されている留学説明会や大学の留学支援室に相談して詳しい人から情報を集め、医療機関や研究活動先に関しては海外のホームページや論文を読んで、自分の学びたい分野にマッチしている施設に直接メールで受け入れの交渉を進めていました。医療機関に関しては、膝関節鏡手術やACL再建術に関して世界的に高名なドクターが開設した多くのアスリートが訪れる施設を見つけ、時間はかかりましたが、担当者の方とメールで交渉し受け入れ許可を頂くことが出来ました。研究活動先に関しては、メールだけでは順調に話が進みませんでしたが、国際学会に参加していろいろな大学の研究者に直談判することで受け入れの許可を頂きました。並行して交渉していたクリニックやスポーツ施設も、結果的に受け入れ許可をいただいたので、授業の合間を利用して訪問しました。NFLキャンプが見学先で偶然行われていて、NFL選手と一緒にお話させていただき、トレーニングできたのは本当に幸運でした。アメフト部の仲間と毎年一緒にスポーツバーで観戦していたスーパーボウルにでていた選手と今、話している、、、。と思うとなんだかびっくりしすぎて現実味がありませんでしたね。

結果的には当初の予定よりも良い活動ができましたが、受け入れ許可が期間内に得られず、最悪の場合奨学金受給停止かもしれないというプレッシャーは中々ストレスでした、、、。

もう少しはやめに情報を収集して、計画的なプランを練っておけば、、、とも思いましたが、とりあえず見切り発車で今回の留学が実現出来た事は本当に良かったと思います。締め切り2週間前のあの日、諦めなくてよかったなとも思います。結果論ですけどね。苦笑

留学前のイメージ

 

アメリカではどこの施設でもEBMを実践している(自分がこれから大学院で学ぼうとしていることをアメリカではどこでも一般的に行われている)と思っていました。

あとは、憧れだった本場のアメフトやバスケはとても盛り上がっているんだろうなあ、とか下手くそなりに、ある程度は英語が通じるのではと、かなりポジティブな印象を持っていましたね。

留学前の英語力

オンライン英会話をしていたので、かなりレベルは低かったですが形にはなっていたと思います。大学にいる留学生と日常会話をする、海外の大学院生との研究に関して簡単なディスカッションもしていました。周りの大学院生よりは少ししゃべれるかなあくらいです。今でも英会話にはかなり苦労していますが、英会話に対する抵抗はオンライン英会話で大分なくなりましたし、留学前の導入としては重宝しました。月額5000円ほどで始められますし、スマホやパソコンがあればいつでもすぐに予約をいれてレッスンを受けることができます。オススメです。

現在の英語力

ベースの知識があり、あらかじめ予習した内容であれば先生の話す英語は大体聞き取れている感じはあります。

知らない専門用語が多くでてくると一気に授業からおいていかれれて、はやく授業終わってくれとしか思わない日もあります。

ディスカッションで自分の理解が浅い内容であると、ネイティブとの会話にはあまりついていけないですね。先生よりも生徒の方が早口でイレギュラーな表現を多く使うので聞き取るのが大変です。先生と一対一であれば、自分の質問したい内容を正確に伝える、相手から期待する答えを得られるようにはなってきました。

留学後変わったこと

英語学習に対する危機感はかなり変わりました。下手とは自覚していましたが、ここまで自分の英語が通じないとは思いませんでしたね。

病院に行った時は顕著で、患者さんと理学療法士の会話にまるでついていけず、このまま大学院に進学して実習など乗り切っていけるわけがないと痛感しました。

あとは、アメリカの医療施設も多種多様で、自分の思い描いていたEBMがかなり実践されているなと感じる施設もあれば、こんなに大雑把に評価・治療していてよいのかな?と感じる場面もありましたね。教育レベルに関しては圧倒的な差がありますが、日本人の勤勉さや解剖学に関する丁寧さ、徒手療法の技術など今回出会ったアメリカ人理学療法士より優れた点もあるなとも感じました。ただ、アメリカのほんの一部の施設を訪れただけですし、日本でも臨床経験が何年もあるわけではないので、日本は〇〇でアメリカは△△みたいな比較なんて、まだまだ出来ないなあと思っています。

留学中に困難を乗り越えた経験

大きな挫折みたいなことはありませんでしたが、とにかく英語が通じない、ルームメイトとの生活スタイルのギャップ、大量のホームワークなど細かなストレス、アメリカ留学生あるあるにずっと苦しめられている感じです。苦笑

ただ、病院実習にいって素晴らしい医師や理学療法士に出会って、自分の知識不足に本当にショックを受けました。すぐに自分が担当していたアメフト部の選手や患者さんとリンクさせてしまうんです。あの時こういう介入をしていれば、あいつは最期の試合で走れていたかもしれない、、、〇〇さんの膝はこうすればもっと良くなったかもしれない、、、と半ば自分を責めるくらいの勢いで考え込んでいました。思い返せば病院実習の1ヶ月間はフルタイムの実習に加え、オンラインでサイエンス系の科目を6単位とっていたこともありかなり大変でした。大学のあるアリゾナ州と病院実習先のインディアナ州は時差が2時間あり、課題の締切を2時間遅らせることができたのは唯一の幸運で、時差がなかったら課題間に合ってなかったと思います。。。様々なストレスはありますが、しっかり睡眠をとったり、たまにビールがぶがぶ飲んだり、遊びに行ったり。ストレスとうまく付き合いながら日々奮闘している感じです。学校の先生やクラスメートがとても親切なので、毎日助けてもらっています。

留学後の留学イメージ

以前から思っていたほど、留学に行くこと自体へのハードルは下がりました。僕が在籍しているコミュニティカレッジは4年制の大学よりも授業料が安いですし、アリゾナは物価がそれほど高くないので莫大な費用はかからないです。僕が支援いただいてるトビタテなどの奨学金の存在も大きな支えとなっております。コミカレに籍を置いておけば、授業のない時間を利用して現地のボランティア活動やインターンに参加することは可能ですし、良い経験になると思います。スポーツに関して言えば、4年制大学への編入を目指して日本人のバスケットボールプレーヤーがコミカレで経験を積んでいるなんて例もありますし、海外でスポーツに挑戦したいという方は選択肢の一つとなるのではないでしょうか。勉強面に関してはホームワークの量などは日本の大学に比べ格段に多く、思っていたよりも大変です。

今後の目標

大学院進学が一つの大きな目標ですが、あくまで手段の一つという位置づけです。

対象者は多岐に渡りますが、例えばアスリートが怪我に苦しまないでスポーツに打ち込んでいる、患者さんが笑顔で自分らしい生活をしている。今よりも根拠や自信を備えて、それらの情景が実現できる理学療法士になりたいと考えています。

スポーツ留学生に伝えたいこと

あまり頑張りすぎず、肩の力を抜いてみるのも時には大事かと個人的に思います。

もちろん日々のトレーニングや練習を必死に努力するのは大切なことですし、根性論的な考え方も体育会系の僕は好きです。

ただ、学生スポーツは時間が限られていますし、海外に挑戦するとなると日本では経験できないさまざまなストレスがあります。

あれもこれも頑張っていて、結局大事なところを見落としてしまってはもったいない。まずは自分の目標にとって一番重要な行動にフォーカスすることが必要だと思います。

SNSで自分を奮い立たせるためにポジティブな言葉をいっぱい発信する、とにかくやり切る!!どこまでも突き抜ける!!と言っている人ほど見えないところでとても苦労していたり、多大なストレスを抱えていたり、理想と現実のギャップに苦しんでいる印象です。もちろんそれ自体素晴らしいことだと思いますが、たまには、うまくさぼったっていい。人の助けを借りてもいい。せっかく頑張っていても、努力のベクトルがずれていては成果が出にくいと思います。それを正しい方向へ導いてあげるサポートをするのがトレーナーの一つの役目とも考えています。

あとは、少し専門的で細かい話になりますが、命は大切にしてほしいです。

熱中症や脳震盪が原因で尊い命が失われてしまうケースはスポーツ現場に少なからずあります。

高校バスケウィンターカップで強豪校の選手が脳震盪で一度コートを離れた後にすぐに復帰して活躍した事例やフィギアスケートの羽生選手が脳震盪が疑われた状態で競技に復帰したことが美談のようにメディアに取り上げられていましたが、非常に危険だと考えています。例えば一度目の脳震盪による症状がのこったままもう一度脳震盪をおこすと致死率が50%以上になるとも言われています。負けたら引退の試合だから、自分にとって重要な試合であるからというケースは多々あると思いますが、命よりは重要でないはずです。

自分でそういった知識をつけていく努力や周りのメディカルスタッフと情報交換をして自分を守ることは忘れないでほしいですね。

最後に一言

今回齊藤さんとはトビタテスポーツ関連のFacebookで知り合いました。話せば話す程共通の友達が沢山居て、今まで関わって居なかったのが不思議なくらいでした。芯を持った素敵な方で、今回の取材の際も私が選手だという事もあり自ら文章を前もって考えてくださったり、私の負担を減らして下さいました。理学療法士は様々な人を助けるという意味でもそういった心の配慮も大切だという事も感じました。トビタテを締め切り2週間前に知っても受かるというのは、それだけしっかりした留学計画が元々あったという事がわかります。トビタテを受ける人たち、そうでない人たちにもしっかりとした計画を立てて留学する意義を考えてもらえるきっかけになる記事になればと思います。齊藤さん本当にありがとうございました。

 

齊藤さんの出身の名古屋大学が西日本一を目指すための資金をクラウドファンディングを行っています!

応援よろしく御願いします。

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スポーツ選手にとっての有益な情報も沢山書いてあるので是非覗いてみてください😆

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記者:本庄遥