スポーツ留学生のひとりごと。

初めまして!このブログではスポーツ留学を考えている人たちが少しでも留学のイメージが湧きやすいように。そして行ってみないと分からないような現地の情報を一人一人に質問し、まとめています。海外の留学に興味がある方は是非色んなスポーツ留学生の先輩を見てみてください!

有馬航輝:馬術 〜自分VS自分〜

 

 

〜紹介文〜

出身地:長崎県佐世保市生まれ。高校進学を機に鹿児島県へ

    現在鹿児島大学農学部4年生

出身校:県立加治木高校

生年月日:1994年9月9日

競技:馬術(障害馬術

国:オーストラリア

期間:2017.3~2018.3

ビザタイプ:W/H

主な経歴:鹿児島大学馬術部主将、九州学生馬術連盟幹事長、全日本学生馬術連盟学生理事

SNS:Facebook(有馬航輝),Twitter(@poxyponx)

〜質問コーナー〜

今回取材に応じてくれた理由

実際に留学する前には、鹿児島大学馬術部主将、九州学生馬術連盟幹事長、全日本学生馬術連盟学生理事という任務を全うした。上記の三つの仕事をこなした後、これからどうしようかと考えたときに、はっきりした目標が見えずなんだかしっくり来なかった。そして、

「僕は本当はどういうことに挑戦したいのか、やりたいことはなんなのか」

をもう一度考え直したいと思った。そんな時、「トビタテ留学ジャパン」に出会った。

留学に行こうと思っている人、留学に憧れている人の中には一握りの「THEスポーツエリート」ばかりでなく、自分の目標を明確化するために行く人や、自分と向き合うために行く人もいるということを知ってくれたらと思った。そして、そんな人たちが思いっきり頑張れるような一歩踏み出す勇気に変わってくれたらと思った。僕は大学から始めた馬術で留学した。スポーツで留学したっていう意味を自分自身振り返りたかった。

 

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留学目的

馬産業の中で働き出す前に、馬文化の発達したAUSで、技術面や知識だけでなく、どんなビジネスが動いているのか、どんなルールの下でスポーツとして動いているのか、どんな人がどんな思いで関わっているのか、ジュニア達はどんな乗り方をしているのかなど現場レベルのマジを感じたいと思った。日本には無い管理方法で飼われているAUSの馬術競技馬たちから日本でも通用する考え方を得たかった。プロになるための下積み期間スタートの一年にしようとおもった。

 

留学計画の立て方

留学に興味があるって言っていた友人の付き添いで、大学の留学相談の部屋に行った。その時は、「とりあえずこの子がどんな話するのか聞いておこう」くらいの感じで座っていたけど、いつのまにか僕の喋りが止まらなくなり、「トビタテの応募書類にそのままその思い書けるよ!」って言われ書き始めた。

僕の場合は誰かに相談したというよりは、自分がやりたい事を自分の中で考えて、ありのままの姿を文章に綴った。気がつけば、日本を出ていたって感じ。応募書類を書く際、留学先の会社社長が日本での仕事をされるときに一方的にメールを送りつけ、なんとか日本でのお仕事に一週間同行させてもらった。そこで僕の将来や、社長がプロとして感じてきたことなどたくさんお話ができた。「じゃあうちにおいで」って感じで、留学計画が一段階上の現実味を帯びた。その時に、馬術競技馬だけでなく、普段関係者以外入れない様な競走馬の厩舎まで連れて行ってくれたことで、将来自分がどういう進路を取ればいいのか考える機会にもなった。留学計画を立てる時に、学生間で納得し合うよりもやりたい事に直結する人に直接会いに行くことが一番重要だと思う。そうすることで、より留学計画に実現可能性が高くなる。行動を起こせるか起こせないかで、そもそも「トビタテに受かる受からない」ということよりも自分のやりたいことができる環境に近付くことも出来ると思う。

 

留学前の留学イメージ

ワーホリでいってる人たちは楽しそうだなあとか、すっごい綺麗な写真をとってるなあとか、普通にいるような留学に憧れる大学生だった。明るくハツラツとしたものというイメージがどうしても強かった。インスタ映えやばめな感じ?今思えばとても表面的な感じ方しかしてなかった。それぞれが何を考え日本を出たのかそういう内面的なことを今はものすごく知りたい。

 

留学前の英語力

高校英語、大学入試で使う程度のなんの変哲も無い大学生。別に受験英語不得意でも無いし、そこまで自信を持って得意でも無いし・・・。英語を喋るという面では、今思えばものすごく壁を感じていたと思う。

 

現在の英語力

最初は本当に「何言ってるの?」ってあたふたしていたと思う。僕の場合、語学学校に行くという余裕はなかったし、留学先のファームも日本人経営という特殊な環境だった。英語を喋るといえばファームに来るお客さん達と馬のことについて話すことくらいで、語学学校で勉強している人の足元にも及ばないと思う。最終的には、英語でアルバイト(簡単な接客)もしたし、電話で飼料会社への注文を任されたり、お客さんの馬についての管理も英語で伝えられたり、装蹄師と連絡取り合ったり、英語への壁はいつのまにか消えていた。

 

留学してみて変わったこと

ものすごく自分の内面と戦ったり、理想と現実のギャップに潰されそうになったりしんどいって感じる期間がほとんどだった。留学したからこその悩みや今後やるべき事が増え、明確化した。でもその悩みや、しんどさを経験することなしに、普通に大学卒業して〜働き始めて…。っていう進路を選択していたかも知れないと思うと本当に怖い。今回の留学は僕にとって「なくてはならない時間」だった。人それぞれ“修羅場体験”は違うと思うけど、“自分vs自分”が僕の修羅場体験だった

 

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留学中の困難

スポーツ留学って、色んなことを知れば知るほど、そのスポーツの難しさが身にしみる。そして自分が追い求めている理想と、今自分が持っている技術や知識とのギャップにものすごく苦しむものだと思う。早くあのレベルまで行かなきゃ!とか一年であそこまで完成させなきゃ!って思えば思う程それが焦りにつながる。そして目先の目標を飛び越えて、3歩先の技術に飛びついてしまう事や、今本当に大事にしなきゃいけないベーシックな感覚から逸脱する事もあった。そして、自分のやってきたこととのギャップを受け止めなければならなかった。僕がこの留学中にいつも心がけ、苦労したことは、「自分の心を真っ白にし、相手の意見をフラットな体制で受け入れる事」だ。どれだけ着実に、丁寧に、純粋に積み上げていけるかが重要だと感じた1年間だった。

 

今後の目標

理想としては、大学卒業後3年ないしは5年またAUSに戻って更に学びを深めたい。この一年の留学は僕にとって、全てのことが「基礎」を知る一年であった。これからは、応用、実践と先の領域に挑戦したい。最終的には日本とAUSで必要とされる知識と技術、経験をもつ本当のホースマンになりたい。

そして、こういう環境があることを後輩達にフィードバックもして行こうと思う。理由は、僕が高校生の時はこんなことができるなんて想像もしてなかったから。まさか、自分が留学するなんて、ましてや馬の勉強のためになんて。そして、僕たちの周りには思っているよりも莫大な人生の選択肢が転がっていることさえも知らなかった。それだけじゃなく、僕!私!こういうことを頑張りたいです!って言えたらたくさんの人が応援してくれるし、直接サポートしてくれたりする事も知った。人生の先輩の意見を大学生や高校生が聞けるような場を設けて、未来の学生たちに選択肢を与えられるようにしていきたい。

 

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スポーツ留学生に伝えたいこと

スポーツで生きる=選手以外の肩書きをいくつ持てるかだと思う。自分の生活を支える柱を何本立てられるか。今や肩書きを変えて生きる、これまでにない肩書きを自分で作ってしまう時代。スポーツ留学だから技術の吸収がもちろんだけど、周りの枝葉となる分野は何かも考えることが必要。どんなことが周りで行われているか、どんな技術に需要があるか、どんな知識が求められているか、アスリートに求められている社会的価値は何か、広く周りを見ることが必要だと思う。軸だけにこだわり過ぎず、たくさんの分野に興味を持つ。こういうことも将来勉強したいなって分野をたくさん宿題として持って帰ってきていいと思う。僕自身宿題まみれで帰ってきた。留学中社長に「今完璧にしようとしても、うまくいかない時はうまくいかないもの。宿題としてこれから続くホースマン人生の中で少しずつ解決していければいいんじゃないか?」と言われて少し楽になった。「そうか、僕はまだこのスポーツを始めて3年ちょっとしか経ってない。今はベーシックを固める時期だ」って。それが僕の留学の意味だって。聴き心地のいいうわべだけのカッコいい言葉より、あなたの本当の「留学の意味」を聴きたい。

 

取材後の一言

彼と初めて出会ったのは、留学一時帰国直前の2月でした。その後も何か発展、新しい案があるたびにお互い連絡を取り合っていて、今回の取材も快く引き受けてくれました。取材のイメージは、例えどんなに悪い留学でも美化したり、綺麗な部分だけ見せてもおかしくないのが取材です。しかし彼は「自分の留学をありのまま語りたい。そして、僕と同じようなケースで留学生している人に希望を与えたい」そういう思いで取材を受けてくれました。彼の経験は苦労が多かった分、どうしてもネガティブな文章に見えるところもあります。しかし、私にはしっかり次の目標をはっきりさせて帰国したように感じました。とにかく熱く、馬術に対する思いが強い。今後は馬術だけでなく、未来の後輩、そしてスポーツ生に対しても色んな形で刺激を与え続けてくれる人だと感じることができました。

取材を受けてくれたこうきくん、本当にありがとう。

これからも「スポーツ留学生のひとりごと。」は留学に興味がある皆さんに一人でも多く留学のハードルを下げ、スポーツ留学生が増えるように発信していきます。

記者: 本庄遥